「イネーブルメント」──それは、会議で突如として登場し、参加者の脳内CPUをクラッシュさせる呪文である。
たとえば、ある日。会議室のホワイトボードの前で、上司がドヤ顔で言い放つ。
今回の施策、営業チームのイネーブルメントを強化することが肝になります!
……は?
突如現れた「イネーブルメント」。なにやら重要そうな響きだが、意味がわからない。いや、イネーブル(enable)だから「できるようにする」ってことだろう? でも、「営業チームのイネーブルメントを強化」となると、もはや文法の迷宮である。強化した結果、営業チームは何をどうできるようになるのか? そもそも今は何ができていないのか?
しかし、誰もそれを聞かない。なぜなら、「それってつまり?」と尋ねた瞬間、「コイツ、何もわかってないな?」という視線が飛んでくるからだ。こうして「イネーブルメント」は、誰も明確な定義を知らぬまま、会議室を支配するのである。
──さあ、今日も「イネーブルメント」という曖昧ワードと戦っていこうじゃないか!
イネーブルメントってなんなのか問題
「イネーブルメント」とは、一言でいえば「支援」のことである。……はずなのだが、なぜかビジネス界隈ではやたらと高尚な響きを持たされている。
たとえば、こんな場面がある。
上司:「マーケティング部門と連携して、営業チームのイネーブルメントを推進しよう!」
部下:「……(つまり、何をすれば?)」
この手のカタカナ語には、「似たような言葉がすでにあるのに、わざわざ横文字にして小難しくしている」という共通点がある。そして、「イネーブルメント」の最大のライバル──それが「エンパワーメント」だ。
「エンパワーメントとの違い、説明できますか?」
……考えたこともなかった。エンパワーメント(empowerment)も、「できるようにする」という意味では同じである。ならば、何が違うのか?
- エンパワーメント → 自発的にできるようになる
- イネーブルメント → 外部の支援によってできるようになる
……というのが、公式見解らしい。しかし、現実にはこの違いを厳密に使い分けている人などいないのである。
それどころか、現場ではこんなカオスな状況が繰り広げられる。
上司A:「営業チームのエンパワーメントが重要だ!」
上司B:「いや、イネーブルメントのほうがカギだろう!」
部下:「いや、そもそも日本語で頼む……」
こうして、会議室には「エンパワーメント派」と「イネーブルメント派」の派閥が生まれ、誰も明確な定義を持たないまま議論が続くのである。
──では、こんな状況で「イネーブルメント(笑)」に振り回されないためには、どうすればいいのか?
イネーブルメントを華麗に乗り切るテクニック
会議で「この施策、イネーブルメントできてる?」などと聞かれたら、脳内に警報が鳴り響く。「イネーブルメント」という言葉自体がフワフワしているため、何を答えても突っ込まれる可能性があるからだ。
しかし、安心したまえ! ここでは、「イネーブルメント攻撃」を華麗に乗り切るための実践テクニックを伝授しよう。
① 「ナレッジシェアを通じたイネーブルメント」と言っておけば大体OK
「イネーブルメント」と言われたら、「ナレッジ」「シェア」「プロセス」あたりの単語を適当に絡めれば、それっぽく聞こえるのだ。
たとえばこうだ。
この施策、イネーブルメントできてる?
ナレッジシェアを通じたイネーブルメントを推進し、プロセスの最適化を図っています!
──どうだろうか? 意味はよくわからないが、「何かやっている感」だけは伝わるのである。
② 「リソースが足りないので、ここはスコープアウトですね」で逃げる
「イネーブルメントが足りていない」と指摘されたときの最終奥義。それが「スコープアウト」である。
営業チームのイネーブルメントが弱いな
確かに。ただ、現在は他の施策を優先しており、リソースの関係上、ここはスコープアウトですね
──何を言っているのかよくわからないが、なぜか「戦略的な判断をしている感」が出るのである。
③ 「具体的には何を指してますか?」と質問して、相手の脳をフリーズさせる
究極のカウンター。それが、「具体的には何を指してますか?」と聞き返す戦法だ。
使用例を見てみよう。
このチームのイネーブルメントを強化する必要がある
具体的には、どの施策を指していますか?
──これを言われると、大抵の場合、相手は「うっ」と詰まる。なぜなら、上司自身も「イネーブルメントとは何なのか?」を明確に説明できないからである。
この一言で、「フワッとしたカタカナ語でマウントを取ろうとする上司」を華麗に撃退できるのだ!
マジレスすると、イネーブルメントとは
ここまで「イネーブルメント(笑)」として散々イジってきたが、結局のところ、本来の意味は何なのか? ここで一旦、マジメに解説しよう。
「イネーブルメント(Enablement)」とは、本来 「支援して、できるようにすること」 を意味する言葉である。特にビジネスの現場では、「営業イネーブルメント(Sales Enablement)」として使われることが多い。これは、営業チームがより効率的に成果を出せるように、ツール・知識・プロセスを提供すること を指す。
具体例を挙げよう。
例えば、あなたが営業担当だとする。しかし、新しい商材についての知識がなく、見込み客への説明に困っている。そんなとき、マーケティング部門が「わかりやすい商品説明資料」や「成功事例テンプレート」を用意してくれたらどうだろうか?
──これが 「営業イネーブルメント」 である。
つまり、「イネーブルメント」とは、仕事をうまく進めるための環境整備なのだ。営業だけでなく、エンジニアやカスタマーサポートの分野でも「イネーブルメント」が使われることがある。
しかし、ここで問題が発生する。
本来シンプルな概念であるはずの「イネーブルメント」が、会議室に入った瞬間、フワフワしたカタカナ語に変異する のだ。
上司:「この施策のイネーブルメントを強化しよう!」
部下:「で、具体的に何をするんですか?」
──このズレが生まれた時点で、「イネーブルメント」という言葉は 「なんか重要そうだけど、実態はよくわからないワード」 に成り下がってしまうのである。
まとめ:結局、イネーブルメントってなんなの?
ここまで見てきたように、「イネーブルメント」という言葉は、その場にいる全員が 「意味はよくわからないが、重要そうだ」 という雰囲気だけで成立している、極めて曖昧な概念なのである。
・便利そうに見えるが、実態はフワフワした概念
会議の中で「イネーブルメントが足りない」と言われても、具体的に何をすれば良いのか誰も説明できない。結局、「何となく強化すれば良いもの」というボヤッとした理解のまま放置されるのがオチだ。
・使う人によって意味が変わる時点で、会話の効率を下げるヤバいワード
Aさんが言う「イネーブルメント」とBさんが言う「イネーブルメント」が全く違う可能性があるのに、誰もそこを突っ込まないまま話が進んでしまう。結果、会議の最後に「で、具体的に何をするんでしたっけ?」という地獄の質問が飛び交うことになるのだ。
・つまり、イネーブルメントとは『意識高い系の潤滑油』なのだ!
この言葉を使うことで、「あたかも会社全体が成長している感」を演出できる。それが「イネーブルメント」の本当の役割である。
──しかし、恐れることはない! 今日紹介した乗り切り方を駆使すれば、あなたも 「イネーブルメント(笑)」の波に飲み込まれずにサバイブできるはずだ。
さあ、新卒・若手社員諸君。次の会議では、「イネーブルメント」発言に惑わされることなく、適当にかわして生き延びようではないか!










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