「エバンジェリスト」とは一体何者なのだろうか?
会議室で突然、「彼は当社のエバンジェリストで……」などと言われると、一瞬、脳内に異世界転生もののOPが流れ始めるのである。「勇者か?」「神の使いか?」「選ばれし者か?」──いや、ただの会社員である。
だが、「ただの会社員」と言うには、あまりにも神々しい響き……! IT業界やマーケティング界隈では、いつの間にかエバンジェリストなる肩書きが増殖し、「〇〇社公式エバンジェリスト」などと名乗る人々が現れるようになった。
しかし、彼らの具体的な仕事は一体何なのか? 何を伝道し、誰を救済しようとしているのか?
今日こそ、この「エバンジェリスト」という謎多き肩書きを、解き明かしていこうではないか!
エバンジェリストとは何か? 〜カタカナの呪文、ここに極まれり〜
「エバンジェリスト」
──この言葉には、何やらスピリチュアルな香りが漂う。直訳すると「伝道師」。そう、彼らは“何か”を布教する存在なのだ。だが問題は、その“何か”が何なのか、誰も正確に説明できないことである。
IT業界では、「最新技術の魅力を伝える人」とされている。例えば「クラウドの素晴らしさを布教するAWSのエバンジェリスト」や「AIの可能性を語りまくる某社のエバンジェリスト」がいる。しかし、それは広報なのか? 営業なのか? あるいはただのファン活動なのか? 境界線が非常に曖昧なのだ。
また、マーケティング界隈では「ブランドの価値を熱く語る人」だったりする。セミナーやSNSで「これからの時代は〇〇が重要!」と熱弁を振るうが、聞いている側としては、「オレたちは結局、何をすれば?」と心の中で疑問符が飛び交うのである。
──そう、エバンジェリストとは「情熱を持って語ること自体が仕事」という摩訶不思議なポジションなのである!
「エバンジェリスト」になったらどうなるのか? 〜謎の権威と、カッコよさげな肩書き〜
「〇〇社公式エバンジェリスト」「〇〇テック・エバンジェリスト」「業界随一のエバンジェリスト」──こうした肩書きを名乗る人々がいる。だが、エバンジェリストの“公式”とは一体何なのか? 免許制なのか? 国家資格なのか? そんなものは存在しない。
しかし、名刺に「エバンジェリスト」と書かれた瞬間、何やら特別なオーラが漂い始めるのも事実なのである。なぜなら、この肩書きには「ただの営業」「ただの広報」ではないという絶妙なニュアンスが込められているからだ。営業は「売る人」、広報は「伝える人」──では、エバンジェリストは?
答え:「熱く語る人」
そう、彼らは売り込みをしない。だが、熱く語る。新技術やサービスの魅力を語り続け、「これはスゴイ!」「時代はこれだ!」と煽る。その結果、「この人が言うなら間違いないのでは?」という謎の信頼が生まれ、気づけば企業のPR戦略の一環として機能しているのである。
ただし、ここに落とし穴がある。エバンジェリストは「熱く語る人」なので、具体的な課題や数値目標を問われると、途端に話がフワフワしがちなのだ。
──「とにかくスゴイんです!」
──「この概念を知っておくことが大事なんです!」
──「未来はこうなるんです!」
いや、そういう話じゃなくて、こっちは「明日の会議で何を準備すればいいんですか?」と聞きたいのである。だが、そんなことを言おうものなら、「まだこの概念が腑に落ちていませんね?」と逆に説教されるのがオチである。
──エバンジェリスト、それはカッコいい肩書きに隠された、説得力とフワフワ感の狭間に生きる人々なのである!
エバンジェリストをどう乗り切るか? 〜適度に持ち上げつつ、華麗にスルーする技術〜
エバンジェリストの話を正面から受け止めるのは、もはや精神修行である。彼らは未来を語る。概念を語る。とにかく熱く語る。だが、実務担当者としては「結局、今日のタスクは何なのか?」が知りたいのだ。しかし、それをストレートに尋ねるのは危険である。なぜなら、「大局観が足りませんね」と逆に説教される可能性があるからだ。
そこで必要になるのが、「適度に持ち上げつつ、華麗にスルーする技術」である。
① ひたすら相槌を打つ
「いやぁ、本当に興味深いですね!」
「確かに、それは重要な視点ですね!」
「すごく納得感があります!」
これを繰り返せば、エバンジェリストは気持ちよく話し続けてくれる。こちらは適当に相槌を打っておけばいいのである。
② “エバンジェリスト返し”をする
たとえ会話を振られたとしても、ボールを持ち続けないことも重要だ。
即座に「〇〇さんのエバンジェリストとしてのご意見、ぜひお聞かせください!」と投げ返そう。
そうすれば、「あ、それ私の役目ですね!」と話し続けてくれるので、こちらは再び相槌モードに入れる。
③ 「それ、すごいですね!」で全部済ませる
「いやぁ、それ、すごいですね!」──この万能フレーズさえあれば、エバンジェリストとの会話はなんとかなる。なぜなら、彼らは「すごいですね!」と言われることが何よりのモチベーションだからだ。
だが、毎回「すごいですね!」だけでは芸がない。そこで、バリエーション豊かに驚くリアクションを用意しておくのがポイントである。
- 「おぉっ、そんな考え方があったんですね!」(※とりあえず感心したフリ)
- 「うわぁ、それは面白い発想ですね!」(※具体的に面白いかどうかはさておく)
- 「いや、マジで勉強になります!」(※何を学んだかは特に考えない)
- 「……えっ!? つまりどういうことですか?」(※わからなくても、わかろうとしている感を演出)
こうしたリアクションをローテーションすれば、エバンジェリストは気持ちよく話し続けてくれる。要は、「この人、話をちゃんと聞いてるな!」と思わせることが重要なのだ。
こうして、適度に持ち上げつつ、何も具体的な話をせずに乗り切るのが、エバンジェリストとの正しい向き合い方なのである。
まとめ:エバンジェリストとは、すなわち……
エバンジェリスト──それは、「なんとなくスゴそうな肩書き」によって発生する現象なのである。
彼らの役割は、未来を語り、概念を広め、人々を啓蒙すること。しかし、現場の実務担当者にとっては、「で、具体的に何をすれば?」という疑問が常につきまとう。だが、それをストレートに聞いてはいけない。なぜなら、逆に「大局観が足りませんね」と説教されるからだ。
では、どうするか? 適当に持ち上げつつ、華麗にスルーする──これがエバンジェリストとの正しい付き合い方である。
「興味深いですね!」「すごいですね!」「素晴らしいです!」などの相槌ののバリエーションを駆使し、適度に驚きながら聞くフリをする。時には「〇〇さんのエバンジェリスト視点でのご意見をぜひ!」と話を振り、彼らをエンドレスモードに突入させる。こうして、こちらの時間と労力を最小限に抑えつつ、無難に切り抜けるのだ。
そして気づくのである。エバンジェリストとの会話を重ねることで、相槌のバリエーションがどんどん増えていくことに。
このスキルは、カタカナ語が飛び交う会議や、意識高い系のプレゼンを乗り切る上で、極めて有用なのだ。社会人としての基礎力と言ってもいい。
つまり、エバンジェリストとは、相槌のバリエーションを布教してくれる存在なのかもしれない。そう前向きに捉えながら、今日も「すごいですね!」と話を聞くふりをするのである!


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