プリミティブ=思考のフリーダム?抽象度MAX会議の悲劇

「もっとプリミティブに考えよう!」

会議の場で誰かがそう言い放った瞬間、筆者の脳内には原始人が火をおこしている映像が浮かぶのである。「プリミティブ(原始的な)」という響きからして、どう考えても文明レベルを一気に下げるワードなのだが、それを使う本人たちは実に得意げなのだ。

──しかし、待て。これは一体どういう意味なのか?

「シンプルに考えよう」という意味なら、最初から「シンプルに考えよう」と言えばいいのでは? いや、それでは普通すぎて“それっぽさ”が足りないのだろうか? もしかして、我々が日々苦しめられているビジネスカタカナ語とは、「普通の言葉をやたらと難しく言い換えるゲーム」なのではないか?

今日はそんな「プリミティブ(笑)」の正体に迫っていくのである。

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プリミティブ(笑)──結局それって何なのか?

「プリミティブ」という言葉、本来の意味は「原始的」「根源的」だ。

たとえば、プログラミングの世界では「プリミティブ型」と言えば、整数や文字列といった最小単位のデータ型を指す。アートやデザインの文脈なら「装飾を削ぎ落とした本質的な表現」を意味するし、哲学の分野でも「人間の根源的な感情や行動」みたいな使い方をされることがある。

──なるほど、これならわかる。

しかし、ビジネスの世界で使われる「プリミティブ」は、こうした文脈とは異なる。というか、ほぼ意味を成していない。

例えば、会議で上司が「この施策はもっとプリミティブに考えよう」と言ったとする。すると、場の全員が「???」となるのだが、不思議なことに誰も「それってどういう意味ですか?」と聞かない。なぜなら、「意味がわからない」と言ったら“ビジネスリテラシーが低い人”認定されてしまいそうだからである。

結果、「プリミティブ(笑)」という呪文が場に放たれた瞬間、みんなが「なるほどですね」「確かにプリミティブな視点は重要ですね」などと適当に相槌を打ち、議論はそのまま進行するのである。

──おい、待て。結局、何がどうプリミティブなんだ!?

プリミティブ・トラップ──使われる場面とそのカオス

「プリミティブ」という言葉がビジネスシーンで飛び交う時、それはたいてい混乱の引き金となる。なぜなら、この言葉が登場する場面の多くは、「具体的な話をするのが面倒なとき」だからだ。

例えば、こんなシーンを想像してほしい。

ケース1:「プリミティブな視点で考えよう!」

A:「このマーケティング施策、もっとプリミティブな視点で考えよう!」
B:「……つまり?」
A:「だから、その、根源的な価値を……こう、ダイレクトに……」
B:「???」

──要は「何も決めたくない」だけでは?

ケース2:「プリミティブな感覚を大事に!」

上司:「このプロダクトのUX、もっとプリミティブな感覚を大切にしよう!」
筆者:「(え、UIデザインの話してたのに、いきなり本能の話……?)」

──一気に抽象度が上がりすぎて、もはや何をすればいいのかわからない。

ケース3:「プリミティブな世界観を持つことが重要!」

会議:「このブランドは、もっとプリミティブな世界観を構築するべきだと思うんですよ」
筆者:「(……石器時代?)」

──いっそ、洞窟に壁画でも描いてこようか?

このように、「プリミティブ」という言葉は便利ではある。なにせ、言った側は何か重要なことを語った気になれるし、聞いた側は意味がわからなくても「深いな〜」と勝手に納得してくれるのだから。しかし、その実態は「具体性をすべて投げ捨てたフワフワワード」でしかないのである。

マジレスすると、「プリミティブ」は意外と有用なのかもしれない

ここまで「プリミティブ(笑)」をネタにしてきたが、冷静に考えると、この言葉がまったくの無価値というわけでもない。

たとえば、技術の分野では「プリミティブ」は結構まともな概念である。プログラミングでは「プリミティブ型」(整数や文字列などの基本データ型)という言葉が普通に使われているし、シンプルな処理を意味することもある。つまり、「複雑な仕組みを捨てて、本質的な仕組みに立ち返る」という意味では、理にかなっているのだ。

また、デザインの世界でも「プリミティブ」は有効な言葉だ。「過剰な装飾を排除し、シンプルな形に戻す」といった文脈で使われることが多い。Apple製品のデザイン哲学なんかも、突き詰めると「プリミティブ」な考え方に基づいていると言える。

さらに、哲学や心理学の分野でも「プリミティブな思考」は重要だ。人間の行動や意思決定を根本的なレベルで捉えるためには、一度複雑なフレームワークや理論を脇に置いて、直感的に物事を考えることが求められる。

──つまり、「プリミティブ」という言葉自体は、ちゃんと使えば意味があるのである。

問題は、それをビジネスの現場で適当に乱用することなのだ。

「プリミティブな視点を持つことが重要ですね!」と語る上司に「では具体的にどうすれば?」と尋ねても、「うーん、もっとこう……本質的な感じで……」みたいなフワフワした返答しか返ってこない。そう、「プリミティブ」は便利な言葉だが、使う側の思考がプリミティブになってはいけないのである。

プリミティブ攻撃をどう乗り切るか?

さて、ここからが実践編だ。もし職場で「もっとプリミティブに考えよう!」などという爆撃を受けたら、どう対応すればいいのか? 以下の処世術を身につけておけば、無駄に脳を疲れさせることなく切り抜けられる。

① 「つまり、シンプルに考えればいいんですね?」と翻訳する

最も安全かつ効果的な戦法は、「プリミティブ」という言葉を「シンプル」に変換してオウム返しすることである。

上司

この施策、もっとプリミティブな視点で見直せないかな?

あなた

つまり、シンプルに考えればいいんですね?

──これだけで会話は成立するし、相手も納得したような顔をするのである。

② 「プリミティブって、具体的にはどういう意味ですか?」と直球で聞く

相手が言葉の意味を理解していない可能性が高い場合、この質問は特に有効である。

先輩:「お前の提案、もうちょっとプリミティブな発想にできない?」
あなた:「プリミティブって、具体的にはどういう意味ですか?」
先輩:「えっ……いや、その……こう、直感的に……本質的な……」

──詰んだ。

この質問をぶつけることで、相手が適当にそれっぽい言葉を使っていたことがバレるのである。

③ 逆に「このアイデア、プリミティブですよね?」とカウンター攻撃

攻めの姿勢を取りたいなら、相手の言葉を利用して、逆にマウントを取るのも手だ。

上司

このプロジェクト、もっとプリミティブな視点を取り入れるべきだと思うんだよね

あなた

おっしゃる通りです。でも、実はこのアイデア、極めてプリミティブなんですよ

(上司、少し戸惑う)

上司

どういうことかな?

あなた

プリミティブの本質は“余計なものを削ぎ落とすこと”ですよね? つまり、これ以上いじる必要はない、完成形ということになります

(上司、沈黙)

上司

……まあ、そういう考え方もあるね

あなた

そうですね。まさに“本質的”なプリミティブな結論かと

まとめ──プリミティブとは、シンプルを難しく言う呪文である

結局のところ、「プリミティブ」とは 「シンプルに考えよう」 をわざわざ難しく言い換えた言葉にすぎない。

もちろん、本来の意味としては「原始的」「根源的」といった価値ある概念だ。しかし、ビジネスの現場では「なんとなく賢そうに聞こえるから」という理由で使われがちなのだ。

そして厄介なのは、「プリミティブな視点で考えよう!」と言われた瞬間、議論が抽象の彼方へと飛んでいく ことである。具体的に何をするのかが誰にもわからなくなり、気がつけば「うーん、やっぱりプリミティブって大事だよね……」などと謎の納得感だけが場を支配するのだ。

しかし、我々には対抗策がある。

  • 「つまりシンプルに考えればいいんですね?」と翻訳する
  • 「プリミティブって具体的にどういう意味ですか?」と直球で聞く
  • 「このアイデア、プリミティブですよね?」とカウンター攻撃を仕掛ける

──この3つの技を駆使すれば、「プリミティブ(笑)」の呪文に惑わされることなく、堂々と社会を生き抜くことができるのである。

さあ、新卒・若手社員諸君。今日から「プリミティブ」を適当にいなし、カタカナ語地獄を乗り切るのだ!

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